デイケア アシスタント

2012.4


 


 デイケア アシスタントについて



 精神科デイケアを始めたのが、1999年。それから10年余りが過ぎた。

 

 最近になってやっと、私が目指してきた精神科デイケアの様相を呈してきた。参加する患者さんたちのことをメンバーさんと呼び、そこにスタッフが参加することはもちろんだが、アシスタントを参加させる発想も、私案にすぎなかった。私たちにとっての仕事が、志を実践し始める当初は意気揚々としていても、やがて日々がマンネリ化してしまうことを最も懼れている。日々流れていること、動いていること、澱まずに・・・。それが生きていることだ。その私たちの動き・生き方が、心病んだ患者さんたちの一人ひとりを少しずつでも生へ向かって、未来へ向かって、動かすに違いない。

 

 スタッフだけでは、やがていつかマンネリ化してしまう。そこでアシスタントを迎えることに着手したのだった。いつか将来、この分野で仕事をしてみたいという若者をボランティア募集してきた。医学生はもちろんのこと、心理学部生、福祉学部生、など関連分野を中心に学部学生や院生対象に募集要項を送付し、ホームページに掲載した。心の時代と言われ始めた昨今、心を失った日々の生活から脱出しようと覇気を求めてボランティア参加する若者は思いの外集まっている。

 

 ややもすると人生経験者は、「今の若者は・・・」と嘆きがちだが、私は、ボランティア参加する彼らを身近に体験してみて、生きがいを求める躍動はいつの時代にも存在しているのだと確信している。その躍動にどう触れることができるのかは、畢竟、求める側に課せられている問題なのだと実感する。彼らがこの分野で仕事を始める前に、まだ専門性未経験のうちに、患者さんたちの姿の一端に自らの意思で触れておくことは、言葉にはならない有益な刺激因子を彼らに残すのだと期待している。

 

 メンバーにとっても、スタッフにはない若さと新鮮さを彼らから掴み取るに違いない。将来は専門家になっていく彼らの事を、アシスタントと呼んだ。彼らには、メンバー一人ひとりの病名も症状も病歴も全く白紙にして接してもらっている。アシスタントたちが、メンバー一人ひとりと接していく中で、彼らの感覚で何を掴むのか、何を疑問に感じるのか、何に感動し何に戸惑うのか、いったい彼/彼女のどこが病いなのか、いったい、専門家になっていこうとする自分と彼/彼女のどこに違いがあるのかなどと思い悩むこと、それこそが、専門家になっていく基盤となり、将来に有益なのだと期待している。


 

 そうであってこそ、メンバーにも有益な影響がある。


 

2012年4月  院 長 小林 和